第1246話:フパ・ザリドナ~墓地から生温い風~

 夜遅く、暗くなってきて欠しい街灯の明かりを頼りに歩いていると、やけに生暖かい風が流れてきた。

 こんな時期に珍しいと流れてきた方へ目を向けるとそこは墓地だった。

 墓地から生温い風……、怖い話の導入でありそうな……

 別になにが出たわけでもないし、この世界にわかりやすい幽霊がいるとも思ってないので特に怖いわけではないけど、何とも言い難い嫌さがある。

 好奇心はあるけど、ここで覗いてしまえばろくでもないことになるのは目に見えているから無視して帰る。


 少し歩いたところで後ろからドロドロ~という小さい太鼓の音が聞こえてきた。

 もしかしてこれ、恐怖の演出……?

 いやまてまて、さすがにこれはないでしょ。

 生温い風まではまだわかる、なんとなくそういう雰囲気が空気を生温くするのはなんとなく想像もできる。

 しかし、このドロドロ~って音が実際に聞こえてきたらそれはおかしいだろう。

 あれはただの演出、恐怖を煽る後付けの音でしかないはず……


 いやいや、もうそこに気づいてしまっては恐怖はゼロ、純度100%の好奇心しか残らない。

 警戒心もどこかへすっ飛んで行ってしまってもうどういうことなのかと少し戻って覗き込んでしまった。

 そこには加湿器とうちわ、小太鼓、あとはこの後に使おうと思っていたのか割れたらいい音がしそうな皿、もしかしたら無視して進んでいたら割れた音が聞こえてきたのかもしれない。

 肝心のそれを使った主は隠れてしまったのか、何の目的でこんなことをするのかと聞こうと思っていたのに、肩透かしされた気分になってしまった。

 なんだかなぁ、という気分で踵を返してその場を去る、そして少し歩いた時に後ろからパリーン!という皿の割れる音が聞こえてきた。

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