第1218話:モポポ・リーリ~イメージ~

「アトレラさん、これから先のビジョンは?」

「そうですね、より事業を拡大し、近隣により貢献できるように邁進していきたいと思っています」

 今日は大手企業の社長へのインタビューだ、実際に経営手腕はすさまじいものがあるが、その腹の底は見せてくれない、何の質問をしても当たり障りのない、まじめな返答をされる。

 これでは何を聞いても変わらないではないか、当たり障りのない質問をすれば当たり障りのない質問を返される。

 しかし、定番の質問を除く何かについて質問をできるほどとっかかりを見せるような人物でもない。

 まったく、インタビューしがいの無い人だ。

 そんな内心飽き飽きしながら退屈な質問を続け、この人も退屈だろうによく顔に出ないな、なんて思っていると、あることに気づいた。

 話すとき、やけに手を体の前に浮かせるな……

 机に置いているわけでも、机の下におろしているわけでもない、手を組んでいるわけでもない、なんとも中途半端な体勢で話している。

「では最後に、先ほどから気になっていたのですが話している時のその手は何の意味があるのですか?」

 しまった、焦って質問を間違えた。

「……この手ですか」

 アトレラさんも少し面食らったのか、一度手元を見て少し考えてから答えてくれた。

「この手は、あまり意識したことはないのですが私の見ている未来の具体的に固めるという、そういう意志の表れだと思います」

「……ありがとうございます、では質問は以上になります、これからも頑張ってください」

 驚いた、こんな唐突な意味不明な質問にも真面目にはっきりとした答えを返してくるなんて。

 しかしどうしたものか、他の質問は当たり触りの退屈なものだし、唯一変わった質問は最後の一つだけだ。

 この質問を記事としてまとめるのは、何を言われるか想像すると躊躇ってしまうな……

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