第1190話:フェーシ・デット~究極のエネルギー~

 夜も消えることの無い明かりに常に照らされ続ける不夜の国、地下のエネルギープラントで莫大な量のエネルギーが生産されているというがその生産方法は機密とされており、一般的には謎に包まれている。

 その秘密を知っているのはフェーシテクノロジー社の一部管理者のみである。

「……なるほど、それで先日社長だった親父が死んで、俺に声がかかったというわけか」

 生前に仲たがいし、この世界でも終ぞは顔を合わせることの無かった親父様がまさかこの世界でこんなエネルギー事業にかかわっていたとは。

 まったく知らなかった。

「それで、俺にどうしろと」

 社長を継げと言われるのかもしれない、わざわざ呼びつけるということはそういうことなのだろう。

 しかし、俺はそんな面倒な話を引き受けたくはないんだが……

「エネルギーの生産方法を聞きたくてお呼びしました」

「なんて?」

「ですから、フェーシ家に代々伝わっているというエネルギー生産の秘伝を聞きたいのです」

 どうやら社長になれと言う話ではないようだ、一安心。

 しかし

「エネルギー生産の方法なんて俺知らねぇぞ?」

「え!? 先代社長はフェーシ家の秘伝であると言って他の者には一切の方法を明かしてはくれなかったのですよ!?」

「そんなこと言われてもさ、もともと生前の時点で絶縁状態だったんだ。何かを聞く機会すらなかったよ」

「そんな……」

「でも別に地下のプラントで今もエネルギー生産はしてるんだろ? じゃあ別に知らなくても大丈夫な話じゃないか?」

 また一から組むとかじゃないんだし、そんな急いで調べたりしなくてもな。

「徐々に生産量が落ちて行ってるんです、その修理に技法の解明が必要でして」

「そりゃあまずい、俺は力になれないけど、どれぐらいで問題になりそうな減少量なんだ?」

「計算上はあと五千年程でこの街を維持することが不可能になります」

 全然余裕がある話じゃないか。

「あーなんだ、あと数年でもしたらうちの弟がこっち来るだろうし、そっちに話聞いてくれ」

 弟が知ってるかどうかは知らんが、実家も別にエネルギー屋じゃなくてうどん屋だったしな……。

 しかし何でエネルギー事業なんか始めてるんだ親父の奴は……

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