第1142話:イション・ツィン~無翼飛行コンテスト~

 無翼人類は魔法抜きならどれだけ軽装で空を飛ぶことができるのかという競技、科学燃料の類も禁止されたときは、魔法を用いない概念干渉を使った重力遮断を採用してきた奴が優勝して、その技術も禁止にした。

 と、こういう歴史を辿ってきた生身飛行コンテストだが、最近に来て限界ではないかと言われ始めた。

 生身で空を飛ぶものが現れ始めたのだ。

 強靭に鍛えた脚で宙を蹴り、どういう理屈か空を駆ける。

 運営組織はこれ以上軽装での飛行は不可能とし、今回の開催を最終回とするか、鍛えた筋肉で空を駆けるのを禁止にするかで協議していた。


「いやぁ、さすがにもう無理でしょう。これ以上の方法で飛んだらそれはもう、魔法や超能力の域です」

「いや、私は人間の可能性に期待したい。枷を掛ければ掛けるほど成長していく者達のはずだ」

「そうは言ってもですねぇ、無翼人類の生身に標準で搭載されている飛行向けでない筋肉での空中歩行まで来たら何を禁止して何に期待すれば良いのかも分からないでしょう」

「超能力を持たない者限定で、意思の力だけで宙に浮いたりしそうですよね」

「そういうのを超能力って言うんじゃないんですか?」

「そうだ、次回は見える範囲で動くのを禁止して飛べるかを競わせましょう。当然超能力も禁止です」

「つまり……?」

「体内組織の動きのみで飛ぶことが可能かもしれません」

「なるほど、それで行こうか」

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