第1141話:クミチ・ケイディン~物語の終わり~

「何もかもが、元通りになった世界はあるべき平和を取り戻し、皆は平和に暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

 本は閉じられ、物語は終わる。

 平和になった世界は続きの本を開かない限り平和なまま続く。

 永遠になった世界で、物語の住人は何を考えているのだろうかと。そんなことを考えていたこともあった。

 そして、彼と出会った。


「俺の世界は永遠の平和を得たんだよ。それまではとんでもなく荒れててさ、魔王が討たれたことがきっかけになって全ての悪が滅ぼされた。その後この平和をいつまでも存続させるべきだという意見が主流になり、いつ悪が現れるかもわからないからと全ての時を止めて永遠の平和を実現させた」

 まるで閉じた物語のようだと思った。

「じゃあ、君はどうしてここにいるんだい? すべてが止まった世界から、君はどうして死んでここに来ることに?」

「さぁな、もともと時間の停止に巻き込まれない異能を持ってたのかもしれないし、止まった時間の中で動ける奴に殺されたのかもしれない。少なくとも他の知り合いをこの世界で見たことは無いから、他の奴はまだ止まってるんだろうけどよ」

「止まってる間は、どうだった?」

「さぁ、止まってるんだから何にも見てないし何も聞いていないし何も考えちゃあいない。いったいどれだけの間止まっていたのかもわからん。主観的には永遠の平和が始まりますっていう演説の後、カウントダウンした瞬間にこっちの世界にいたって感じさ。もし、いつか時間の停止が解かれたとしたら「あれ、時間が止まらないぞ?」って言うだろうよ」

「つまり?」

「何も変わらないのさ、時間が止まろうと止まらなかろうとな。世界は誰かが見ている物語じゃないんだから」

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