第1088話:テン・カロライ~体格差~

「君は本当にでかいな」

 少し顔を見上げたところで目が合う彼女に対して言う。

「そうですかね? これでも仲間内では小さいほうなんですけど」

「知っているさ、僕とつるんでいる理由が、僕と並んでいれば大きく見えるからだってこともね」

 僕と彼女では生まれの種族が違う。

 彼女の種族は平均して一般的な人と比較して背が高く、僕の種族には小さい人が多い。

「さらには、仲間内では小さいと謙遜にならない謙遜をすることでごまかそうとしているが、でかいと言われたらうれしいってことを隠していることも知っている」

「そ、そんなことないですよ!」

 慌てて否定するが、図星の反応だ。

「そんなことはどうでもいいんだよ。事実として君はでかいし僕はチビだ。僕が言いたいのはそれに起因する不便をどうにかしたいって話」

「何か困ってましたっけ?」

「君は困ってないかもな、僕は今現在進行形で首を痛めそうな気がしているよ。一度しゃがんでくれないか」

「あ、ごめんなさい」

 慌てた様子で彼女はしゃがんで目線の高さを合わせた。

「他に、道を案内するときには君が通れる高さがある道かどうかを考えなければいけなかったり、君からのおすそ分けは常に量が多い。他にもいろいろあるが、これで困ってないなんてことがあるわけないだろう!」

「あぁ、それ困ってたんですね」

 少し考えて納得したように言った。鈍感か。

「困ってたともさ、幸い君と違って僕は身長にコンプレックスはないが、もう少し大きければ楽だったのにと何度も思ったぐらいにはね!」

「うーん、じゃあこうしましょう!」

 何かを思いついたように彼女は突然僕を持ち上げて、所謂肩車をした。

「馬鹿か、これじゃあ何の解決にもならんだろうが」

「そうですか? しばらくやってみましょうよ」

「今すぐやめろ、お前が普段の感覚で通ろうとした通路の天井に頭をぶつける前にだ!」

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