第1062話:フロット・ズーニー~怪しい香炉~
「これ、いつの間に買って来たんだ?」
同居人の部屋に入るといつもとは違う、少しだけ粉っぽい甘い匂いがして、出所を探してみると簡素な装飾が施された香炉があった。
「こないだ入った古道具屋でな。なかなかいいだろ」
「お前今までこういうの興味ない感じじゃなかったか、珍しい」
少なくとも部屋に香炉を置くぐらいなら消臭剤を置くタイプだったはずだ。
「俺もそう思ってたんだけどな、ひとめぼれってやつだ。見た瞬間これだ!ってなってな、気付いたら香炉だけでなく、香木も香炉灰も買ってそろえてたってわけ」
「ふぅん。まぁいいか、せっかく買ったんだから大事にしろよ、お前はただでさえ物持ちが悪いんだからな」
「言われなくてもわかってるよ」
数日後
「最近部屋から出てきてないがどうした……ってくっさ! なにがどうした!?」
部屋から出てこなくなった同居人を心配に思い、部屋を覗いてみると異臭がした。
腐臭じゃないから死んでるわけではなさそうで、とも思ったが同居人は倒れている。
鼻をつまみながら部屋の中でにおいの元を考えるとやはり怪しいのは先日の香炉である。
先日見た時から場所は変わっていないそれを見つけると中を覗き込む。
「何燃やしてんだこれ……」
香炉の中で煙を立てていたのは紫の泥のような物。
それが、泥甘いにおいの元になっていた。
とりあえず灰をかぶせて火を消して、同居人を担いで部屋の外へ。
脈を確認して、生きていることを確認。
部屋は一時目張りして密閉、同居人の目が覚めるのを待ってから対処することにする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます