第1059話:フレイド・アラウ~物理機構~

「これをこうして……うーん、うまくいかないな?」

 仕事上必要になった機構を組んでいるのだけど、専門外であることもあって全く捗らない。

 なんでここの部分は術式書いて同期させられないんだろうか。

 いや、そういう素材を選定したのは私なのだけど、それは仕方ないというか、外部からの干渉を防いでくれということだったし、そういう素材を使う他なかったんだよ。

 だから許してくれよ、そう過去の自分が語り掛けてくるようだが、結局は自分で自分を納得させる言い訳みたいなものだし、結局納得してこの設計を進めるしかない。

 あっちの値をこっちの値に放り込めと術式を書けばどうにかなる概念魔術と違って、物理機構のなんという複雑なことよ。

 素材の摩擦係数や質量による伝達ロスなんて全くわからんし、伝達の際のリンクの長さとか、角度とか、上手くやらないと引っかかって理想通りの挙動は得られない。

 よくこれを昔の人は手計算で実装していたものだ、尊敬に値する。

 よく、今の方が技術が発展しているのだから未発達文明人よりも文明人の方が賢いと錯覚している人がいるが文明によって個々のやることをどんどん肩代わりさせた結果、これらのことを素で行えるような人はいなくなっている。


「だめだ、わからん」

 変なことを考え始めて計算が一向にうまくいかない。

 これはもう、わかる人を呼んできた方が早いし安く済むな……

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