第1046話:イム・ヨウホウ~クライミング壁~
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最初は変な町に住むのも面白いと思って住み始めたものだが、やはり変な町に住むというのは不便というものだ。
本来の地面の方向が横なので、雨は絶対に部屋に入る向きで降ってくるし、外の足場は狭い。
基本的に踏み外したら下へ行くほど足場は徐々に狭まっていくため下まで落ちていく。
まぁ、下まで行けば重力の向きが正常になるため、今までの加速度は横へ、下向きの加速度はほぼないに等しいのでまだ受け身が取れる。
痛いとか怪我をするのもあるが、それ以上に登りなおすのが億劫だという感じだ。
なんでそんなことを今愚痴っているのかって、落ちたからなんだよ。
「上に直通のゲートでも置けばいいんじゃないのか」
「そんなことをしたら上に住む意味がないじゃないか」
ふと口をついて出た愚痴に、最下層に住むおじさんが的確に口をはさんでくる。
確かに上も下も外から見たら変わりないこの町で上と下がつながってしまっては、上に住む理由がなくなる。
あえて不便に住んでるのに、便利になったら意味がなくなるという物だ。
「そういうあんたは何で下に住んでるんだ」
最下層に住むのは彼を除けば他に誰もいない、ほとんどが上の方に居を構えている。
「そりゃあ、こうやって落ちてくるあんたらを眺めるのが趣味だからだよ」
「……いい趣味してるよ」
さてと、と梯子に手をかけた。
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