第1024話:トルトリ・ヴァニア~隣の世界~
「異世界探索?」
もうそろそろ来るやべぇ夏季の避暑にどこ行こうかという話をしている時に、
「そう! 最近の流行でね。物理法則の異なる場所で不思議な感覚を味わおうってツアーさ」
「物理法則が違うのか? 危なくないか?」
いきなり体が分解されたりとか窒息したりとか、そういうことは無いか?
二度と俺はそういう体験はごめんだぞ?
「大丈夫大丈夫。環境保全スーツがあるみたいだから、それ着てればどんな物理法則の空間でもスーツの中はこの辺と変わらないらしいよ」
らしい、みたい、ね。
「ていうか、異世界なのか?」
「へ?」
「物理法則が違うって言っても、地続きなんだろ?」
「まぁ、そうだな?」
「じゃあ、ちょっと不思議な地域ってだけで、異世界じゃないんじゃないか?」
「え?」
「異世界って違う世界のことだろ?」
「いやいや、全然違う場所ならそれは異世界だって」
「そうかなぁ?」
「そうだって!」
その後も空間的に隔絶されている派(一人)と物理法則に違いがある派(一人)で異世界とはなんぞや談義が白熱し、結局二人とも疲れたあたりでうやむやになって話が戻ってきた。
夏季の避暑にどこ行こうかって話だったな。
「で、どうする? 異世界旅行、行くか?」
「異種物理体験ツアーなら、行くぞ」
「あ、てめぇ……もうそれでいいや、じゃあ適当に手続しておくけど、こんな場所行きたいって希望あるか?」
「暑さが不快じゃないところがいいな……」
「了解、あるかな……」
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