第1019話:コラン・ラテ~高速移動~
何もない平原、地面もフラットで、目に見える凹凸もない。
どういうわけか、小石の類も転がっていないし、掃除の行き届いた体育館のような地面が屋外であるにかかわらず見える果てまで広がっている。
どういう環境があればこんな地形が形成されるのかは全くわからないけど、私はこの平原がとても好きだ。
私の全力が何の憂いなく、発揮できるから。
軽く地面を蹴る。
世界は引き伸ばされ、自身が知覚するより早く世界が進む。
私の全速力は速すぎて自分でも今目の前にあるものが何かわからなくなってしまう。
壁があれば命は無いし、石を蹴ろうもんなら文字通り果てまで飛んでいき誰かに当たるだろう。
一度だけ、死ぬ前に一度だけ走ったことがあるけど、
そのことはよく覚えていない。
だから、ここを見つけるまでは、全力で走ったことが無かった。
風が気持ちいいとか、流れる風景が楽しいとか、そういうことが感じ取れる速さではないんだけど、たんに全力を出せるっていう、それだけのことが楽しい。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
全速力で走り回っていて、気付いたら夜になっていた。
明日もまた、走りに来よう。
ゆっくりと、目の前がわかって、すぐに止まれる程度の速さで、家に向かって駆け出す。
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