第1016話:タルマキ・スウカ~温泉女将~

「いやぁ、二日間大変でしたね」

「うん、福引の景品で人数無制限の招待券だったとはいえ、まさかあんなに来て、あんなに騒がしくしていくとはなぁ」

 いやはや、こんなに賑わったのは久しぶりのことだ。

 一泊二日で三グループ、総勢十五人。なかなか癖が強いお客ばかりで大変だった。

「開いた今のうちに掃除洗濯とか全部終わらせようかね」

「次にお客さんが来るのはいつになるかわかりませんけどね」

「いつ来るかわからないからこそ、いつ来ても大丈夫なようにきれいにしておくのです」

 うちは雑務を自動化しないのが売りだ。

 手作業で雑巾をかけて、職人が食事を作る。

 掃除洗濯建物の修繕買い出し送迎チケットの作成まですべて手作業で行っている。

「いや、うちは完全予約制なんだから急な来訪は無いでしょうよ」

「設備は常に劣化していくのだから、常に弛まぬ整備が必要なのだよ」

「それはそうですけどね」

「まさか、自動化したい等とは言うまいね?」

「いやいや、そんなまさか」

 今どきこんな労働環境であるので、従業員は少ない。

「辞められたら困るんだから、労働条件は悪くないだろう?」

 各種手作業の強要はあれど、お客さんがいない時の管理は特に休み時間も多く、飯もうまいし退屈しのぎには魔物を戦車で狩り放題。

「さて、次のお客に備えて準備準備!」

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