第914話:キャリザム-イズマ~情報破損~

 ペンポン♪

「お?」

 ポータブルデータストレージデバイスを接続したら、エラー音とともに【データが破損しています】の表示。

「うーん、困ったなぁ」

 重要かと言われればそうでもないほどだけども壊れてほしいデータかと言われたらNOであり、そもそも壊れてほしいデータは情報端末につないだりはしない。

 どうするかなぁ、繋ぎなおしたら認識とかしてくれないかなぁ。

 何度繋ぎ直してもだめで、仕方ないとデータを何とか復旧を試みる。

 データの一部だけが欠損していて、全体が読めなくなるということもよくあることだしな。

 少し寒いが、タートルネックのセーターの首元を下げて端子を露出させ、ストレージデバイスの物理コネクタを接続して目を閉じる。


 目を開けるとそこは部屋でなく、極彩色の空間。

 空間というか、データストレージの中だ。

「思ったよりも面倒な壊れ方をしてるな……」

 みるからにデータがずれている。

 こんな極彩色になるデータは保存してなかったが、色味が違うだけで見覚えのあるものも結構ある。

「これはズレてるだけだな」

 正常な場所とズレている場所の境目のデータがつぶれて、その分ズレたんだろう。

 よくあることだ。いや、無くなってほしいことではあるが。

 壊れたデータの空間だからと言って、コンピュータウイルスが暴力を持って襲ってきたりとか、自分がデータの一部になって出られなくなるなんてことはないが、慎重につぶれた部分を探す。

 うっかりしてデータ全損とかしたくないだけだ、一見しただけではつぶれた部分は見つからない。

 慎重かつ大胆に探さねばならない。

 単なるストレージなので稼働部みたいなのが無いのが幸いか。

 それでもさっさと見つけて出たい、肉体の目ではないが、破損空間をレンダリングするのは精神的に疲れやすいんだ。


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