第911話:サウロア・インジニス~星の海に沈んで~
星の海と呼ばれる場所がある。
光の粒子が溢れるつぼ状になった穴の底で、暗い岩壁に反射しない光の粒はまるで記憶の中の夜空のようで私のお気に入りの場所だ。
なのだけれども、今日は光がやけに多い。
日によって光の量は違いがあるけど今日は普段の10倍ぐらいの光が湧いてきている、めちゃくちゃまぶしい。
何かあるんだろうか、そういう時期なのかな。
ちょっと、今日はまぶしすぎて気分転換にもちょっと良くない気がするし、帰ろうかな。
大きく空いた穴から見える、実際の夜空から一つの星が消えるのが見えた。
「うわぁ」
翌の夜、今日は大丈夫かなと星の海にやってきたわけなんだけど、ツボの口から光の粒が溢れていた。
無音で空に立ち上る光の粒は私の背の倍ほどの高さまで登ってから散って消えていた。
相変わらず粒子は明るいが物を照らしたりはしないから、辺りが明るくなったりはしなくて、これはこれで不思議な光景で。
もしかしたら星の海の底に穴が開いて、いつも漏れていたのよりも多い光があふれているのかもしれない。
じゃあ底の穴をふさげば普段通りの光の量に落ち着くのかとも思ったけど、私にはそれをする技術が無い。
できてスコップで穴に土をかぶせることぐらいだ。
「とりあえず、様子だけ見に降りてみようかな……」
梯子を降ろして、下の地面をしっかり噛んだことを確認してゆっくり降りていく。
星の海の底に足を着けて、地面が安定しているかどうか確認する
が、そのまま梯子の足が底を抜いた。
「あ、」
声が漏れるがバランスを崩した体を支えるはずの地面は崩れている最中で、ツボの底に空いた光の漏れだす穴に落ちていった。
気付いた時には地面の上で、もともと穴があった場所はどういうわけか埋まっていて、星の海は無くなっていた。
星の海の底が抜けたのは夢だったのか、とも思ったけどじゃあなぜ星の海は無くなってしまったのか。
わからないことは多すぎるけど、幻想というものはそういうものなのかもしれないと割り切って、これからはどこへ行こうかと思考を巡らせる。
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