第908話:アイコウ・ヒスイ~匿名の贈り物~

「お届け物です」

「はい、誰からだろう……?」

 心当たりがない、何かを注文した記憶もないし、誰かから何かをもらうようなことをした覚えもない。

 送り元は書いてないし、いったい何が送られてきたというのか。

 封を開けてみると、なんでピンポイントでこれが届いたのかわからないぐらいに欲しかったもので、誰が送ってきたのかがだいぶ絞られる。

 私がこれを欲しがってるって知ってるのは本当に3人ぐらいしか心当たりがないからだ。

 まぁわざわざ匿名にして送ってくるというからにはバレたくない理由があるからだろうし、余計な詮索はするもんじゃないだろう。

「でもお礼は言いたいんだよな」

 カマかけして適当に全員に礼を言って回ろうか、送り付けた本人ならわかるだろうし、それ以外だったらわからんだろうし、別に礼を言うことに抵抗がある人種ではないので気にすることじゃない。


 全員違った。

 礼を言ったら全員が全員怪訝な顔をされたし、何かを要求しようとしてるんじゃないかとまで言われた。

 さすがに物を匿名で送り付けた奴の反応ではない。

 はて、では誰がこれを送り付けてきたのだろうか。

 だんだん怖くなってきて、匿名で欲しいものが送りつけられる事件を検索する。

 結構同じような話はあるんだな……、でも誰が送ったかはわからないと。

 ううん、怖いな、怖いけど欲しかったものだし貰っておこう。



 数日経ったある日、一枚のはがきが届く。

 過去に贈り物をする、過去便始めましたとのこと。

 その時はへぇ~ぐらいに思っていたんだけど、少し経ってから前に届いたものが安くなっているのを見た時に頭の中ですべてがつながった。

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