第907話:スーカ・ソイック~宇宙遊泳~

「宇宙遊泳がしたい」

「え、どうしたの急に」

 また唐突に変なことを言い出した。

「昔はよくやってたんだけどさぁ、この世界には宇宙が無いじゃん?」

「まぁそうね」

 たしかにこの世界に宇宙があるという話は聞いたことが無い。

「宇宙遊泳したいんだけどー」

「宇宙は無いけど、海はあるじゃん。泳ぎたいなら海行こうよ」

「海はいや、重いし、濡れるし、冷たいし」

 宇宙というのはそうではないのだろうか、泳ぐというからには水場だと思ったのだけど。

「宇宙は軽いの?」

「え、あー、そっか宇宙遊泳したことないんだ。そうだねー、宇宙は軽いね。すごい軽い」

「ふぅん、」

 重いって言う海の水が綿のように軽くなっているのを想像する。

「それはそれで泳ぎづらそうじゃない?」絡みつかれそうだし。

「まぁね、でもジェットとかの道具を使えば結構楽しく泳げるんだよ」

「ジェット? 泳ぐのにジェットを使うの?」

「そうだよ、むしろジェットを使わないと泳げないかな」

「吹っ飛んでかない?」

「ちゃんとやればね、下手だと二度と帰ってこれなくなるって宇宙に出させてもらえなくなるんだよね」

「怖くない?」

 二度と帰ってこれないってどういうこと、でも海でもそうかな。深いところにもぐってしまったら帰っては来れない気がする。

「まぁ、宇宙は怖い場所だよ」

「そんな場所で泳ぐの……?」

「まぁ、気を付ければ楽しいからさ。でも、海よりは安全だと思うな」

 話を聞く限りはそんな感じはしない……

「あ、調べてみたら宇宙遊泳できるばしょあるじゃん! 行ってみよ!」

「ごめん、今の話聞いてたらさすがに怖くて行けない」

「そう? まぁ、こんど写真見せてあげるね」



「あれ、どうしたの?」

 翌日あった彼女はなんかふてくされていた。

「昨日行った宇宙遊泳できる場所、宇宙プールっていう宇宙っぽい見た目のプールだったの……」

「宇宙じゃなかったんだ」

「雰囲気は宇宙っぽかったんだけどね」

「そっちなら付き合ってもいいかな」

「え、ほんとに? じゃあ雰囲気だけで本当はいらないんだけど今から宇宙服買いにいかない? おそろいにしよ!」

 宇宙服、水着みたいなものかな。

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