第905話:スガモ・ホニヒト~無限芝刈り~

「庭に草が生えた」

「そいつは笑えるな」

「笑いごとじゃないんだよな、これが」

「つまりどういう?」

「除去できない、無限に生えてくる」

「そいつは不運だったな、たまにあるらしいとは聞いていたけど、お前のところがなるとはなぁ」

「ほんとになぁ、まったく嫌になるぜ」

「で、どうするんだ? なんとかするか、そこは捨てて引っ越すか。引っ越すなら手伝うぜ、引っ越し先選びは楽しいからな」

「そりゃあ口だけ出して自分は住まないからな、理想の生活だけ夢想できる。楽しいだろうが、俺は今の家も結構好きなんだ、庭を何とかする方向でいかせてもらう」

「そうか、残念」

「んで本題、実際どうしたらいいと思う?」

「草だろ、燃やしちまえばいいじゃないか」

「枯草でもない限り全部は燃えねぇぞ、しかも燃えた後から生えてくる。今の時期はいいが、先の夏とかに庭を火の海にしたくねぇ」

「俺なら何時何時いつなんどきどんな瞬間であろうと庭を火の海にするのはごめんだがな、お前は結構寛容なんだな。知らなかったぜ」

「そいつはどうも、他にアイデアなんかないか? 俺も思いつくことは一通り試したんだが、どれもいまいちでな」

「そうだなぁ。よし、そうだ。でかい蓋で覆っちまおう。どうせ草なんだから地面が露出してなかったら生えてこれないだろ。地中で種の状態で生き埋めにしてしまえばどうにもならんだろ」

「あーなるほどなぁ、それはいいかもしれない」

「思いつくことは一通り試したのに、まだこの程度のこと試してなかったのか?」

「思いつかなかったんだから仕方ないだろ」


「聞いてくれ」

「おう、なんだ。引っ越しか?」

「まだはやい、いや視野には入れるが庭にした蓋がえらいことになった」

「だろうな」

「なんだ、どうなるか予想してたのか?」

「いや、この話の切り出し方ならそうかなって思っただけだが。で、どうなったんだ?」

「庭の高さが屋根を超えた」

「へぇ、お前の家の庭に生えた草。とんでもないものだったんだな」

「ボコボコ生えてきたから草だと思ってたけどもしかしたら草じゃなかったのかもしれない」

「引っ越すなら相談に乗るぞ」

「引っ越すかもしれんがお前には相談しない」

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