第895話:オウルラ・シホヌ~よりにもよって~

「なんで?」

「いや、全然わかんないんだけど」

 あれとこれがいい感じ、いや逆に最悪な形で組みあがってしまって、まったく身動きが取れない今に至るのだけど、この経緯をこと細やかに説明しても、全然信じてもらえないどころか、ふざけているのかと思われて助けてももらえない。


 ゴミを捨てに外に来たんだ。

 ゴミの詰まった袋を手に提げて玄関を出たのはいいものの、階段を降りようとしたところでカギを掛けていないことに気づいて振り向いて、運かタイミングか、それとも私の要領か、いずれかが悪かったために、私の体は階段からなげだされ、死んだかな?と頭を過ったものの持っていたゴミの袋がクッションになってケガはなく、かといって落下の勢いをすべて袋が吸収したかといえばそれは否で、勢いのベクトルが下向きから若干上向きになって表通りに飛んでいき、うまいこと道路の上を体感的にはスローモーションでクルリと一回転しながら飛び越えるが、勢い足りず道に落下して、偶然通りかかったトラックの、これまた柔らかい荷台に落ちた。

 その時点で何が起きたかも理解できてなくて、そのまま降りることもできずに運ばれて、運ばれた先の廃棄場で埋められかけたところをゴミによって来た大きな鳥のような怪物に掴まれて、森の奥にある巣まで運ばれて、ちょうどそこへその怪物の討伐に来たハンターが巣のある樹を切り倒して落下して、気絶したから運ばれて、近所の魔物ハンターギルドで目を覚ましたんだけど、併設されてる研究所でちょうど爆発があってそのまま飛ばされた先で飛んできた薬品のねばねばにからめとられて家の前でこうなってるわけなんだ。


「なんで?」

「わかんない」

 一から全部説明してもこのありさまだ。

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