第859話:フタグニ・ソウト~殺伐ゲーム~

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 誰もしゃべらない、ただ全員がモニタを見て高速でボタンを叩いている。

 画面の中ではそれぞれのキャラクターが高速で動き回っている。

 打ち、叩き、投げと様々な技を繰り出し戦う。

 暗い部屋で無言で打ち合う様は狂気すら感じる。

 買い出しから帰ってきて遭遇したそんな光景に、後退りしてしまったとき、持っていたビニール袋が「ガサリ」と音を立てた。

 タイミングが悪かったか、集中力か、一人がミスをした。

 睨まれるかと思ったが、無視されてたんたんとゲームに戻った。

(逆に怖ぇ……)

 できるだけ音を立てないように袋を置いてモニタがよく見える後ろに座る。

 その試合は僕のせいでミスったやつが負けて、買ってきた飲み物を無言で渡すことになった。

 一口飲んで、次の試合が始まる。

 キャラは変えずにそのまま継続、やはり無言。

 よくこんな雰囲気でゲームできるな、と思わなくもない。

 ただ無表情、高速で動く指、変わらない視線、これは怖い。

 この試合はさっきと同じやつが勝って2連勝で僕と交代。

 鞄から自分のコントローラーを取り出して接続する。

 試合開始前にフッと一息、モニタを睨み付けてキャラを選ぶ。

 集中するために余計な思考は止める。

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