第825話:ハンバ・リオン~奇妙な裁判~

「開廷!」

 裁判という物がある。

 罪を犯したとか犯してないとか、そういう話をする場で

「被告人、ハンバ・リオン」

 その罪をいろんな視点から見て真実なのかどうなのか

「被告は、原告に対して行った暴行行為にて」

 厳正に判断して適正な罰を割り当てる場でもある。

「死刑を」

 厳正に判断して、適正な罰を割り当てる場のはず……

「死刑???」

「いかにも」

「これ正当な裁判ですよね? え、俺もしかして個人的恨みで裁判装って亡き者にされようとしてる???」

 さすがに異議申し立てる。

 まだ何も始まってない、開廷して名前呼ばれて次には死刑宣告なんてさすがにおかしいが過ぎる。

「弁護人!?」

 弁護士が居たはず、この場で初対面だけど、職務上弁護してくれるはず……?

「私には……ハンバさんを……これ以上助けることは……」

「まだ一言も発してないでしょ? これ以上どころか以下も無いんですよ」

 泣きながらそんなことを言われても困る。

 この裁判……何かがおかしい!

「そもそも俺は暴行なんてした覚えもないし、その原告とやらと会ったのはここが初めてだ!」

「被告人は許可を得てから発言するように」

「いいや言わせてもらうね。何なんだこの裁判は、なんの冗談だ? 突然連れてこられたと思ったら何にもしてねぇのに死刑だのなんだの、ここからヒーローでも殴りこんでくるってのか? もしかしてヒーローショーか? 昔そういう話を見たことがあるぞ? お前ら全員怪物で、助けに来たヒーローに爆散させられる流れだな?」

「被告人!」

 裁判官が止めても俺の言葉は止まらない。

「おう、どうせ死刑だ、このまま続けさせてもらうぜ? 弁護人が役立たずだからな、俺は俺の言葉でこの場を切り抜けるぞ?」

「被告人?」

「被告人ってあんな人でしたっけ?」

「いや、もっとおとなしめで、控えめなイメージの……」

 ん、なんか様子がおかしいな?



「は? 人違い?」

「えぇ、同名のハンバ・リオンという者が居まして、それがその、まったく同じ顔をしていまして……、今日はその10回に渡る裁判の最終判決の告知日だったんです」

「何で間違えたんだ……」

「本当によく似ていたもので……」

「じゃあ俺は帰るぞ」

「いや、待ちたまえ」

「なんだよ」

「裁判を混乱させた罪状で告訴させてもらう」

「いやそれもおかしいだろ」


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