第817話:ゼッタ・グラー~円~

「円ってさぁ、何角形だ?」

 唐突に投げられた疑問、数学的な話だろうか、定義的な話だろうか。

「無限では?」

 直感的な回答をする、円は無限に細分化された図形だとすると、角の数は無限になるはずだ。

「え、無限なの?」

「無限じゃ無かったら何角形なんだ?」

「ゼロ角形?」

 わからないことはないが……

「角がないから?」

「うん、円ってつまりは角がないから円なんだろ?」

「確かに円には角は無いが……、なんとなく無限かゼロかのどっちかっぽい気がするな」

「だよね、なんとなくわからないよね」

「そもそも考えたことも無かったよ、円が何角形なんかなんてよ」

「詳しそうなやつに聞いてみようぜ」

「そうだな」




「65537角形だと言われている」

「なんで?」

「所以は知らないが、65537角形は円と言っても差し支えないと言われている」

「差し支えないとは」

「やはり円は65537角形ではないのでは?」

「ほぼ円ではあるけど円じゃないな」

「いや円だよ」

「説があるだけじゃなぁ」

「円と言っても差し支えないのは円じゃないな」


「円は32角形だ」

「なぜ?」

「さっきと違って断言だな」

「3D造形において、円を生成すると標準で32角形の円ができるから、円は32角形なんだ」

「それは扱いやすい頂点数とかそういう話なのでは?」

「32個だとデータ的にきれいとかそういう」

「でもなんとなく円は32角形からって感じしないか?」

 16角形と32角形の図を出してくる。

「確かに32角形の方が円っぽいけど、なんでそんな図を持ってるんだ?」

「そもそも比較なら31角形を出してほしかった」

「図は今作ったんだが、32の前のデータ的に綺麗な数が16だったから……」

「やはりデータ的にきれいなだけで32角形と言ったのでは?」




「結局、円は何角形だって結論は出たか?」

「何角形で定義されているものじゃないんじゃないかな……」

「まぁそうだろうな……」

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