第813話:フィム・ラクラ~己の悪性~
「俺がこんなに悪い奴だなんて気付きたくなかったんです」
ここは懺悔室、犯した罪を吐露することで少しでも楽になりたい自分が嫌になる。
「何をしたんだい?」
「友人が、ずっと傷ついていたことに気付くこともできずに、へらへらとした僕の軽薄な言葉で傷つけ続けていたんです……」
「うん、それは自分自身を責めても仕方のないことだね」
「えっ……」
そう自分を責めるんじゃないって言われると思っていた。
「他所の懺悔は知らないけど、うちはそんなこと無いから。うちは罪を吐露して心を軽くすることが目的の懺悔室じゃないから」
「それは、どういう?」
話を聞いてもらえれば良かった、それだけのはずだったのに。
「どうせ君みたいなタイプは罪を聞いてもらって許されても、自責を軽くしたことでより罪を背負うんだろう」
当たりだ。
確かに僕は自分が懺悔によって楽になることすら罪だと、そう感じていた。
「どうして、そんなことが」
「それぐらい話し方でわかる。君もそうだが過剰に自分を悪く言うんだ。まるで「そんなことないよ」「君は悪くないよ」って言ってほしいみたいにな、そのくせ、本心はもう一つ裏側に置く」
全部見抜かれていた。
「だから、私は罪を許さない。君が君の罪を許せるまでは私も許さない、君に私ができることはその罪を罪であると認めてあげることだけだ」
「そんな、じゃあ僕は何のために懺悔を……」
「自分を許さないためだろ? 一応救いになる言葉を1つ教えてあげよう。自身の悪性に悩みもがく者は美しいんだ。許せる気になったらまたおいで」
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