第812話:イジャール・アドモンスⅣ~砂の市場~
「いーじゃるー!」
部屋につけてもらった扉をドーンとぶち破って飛び込んできたのは砂人の子、バグサだ。
「何だバグサ」
用があってくるようなものではないが、用がなくても来るんだった。
「今日こそは外で遊ぼうとおもっての」
「いいぜ」
「なんと、良いのか?」
「ああ、ようやく対策が整ったからな」
「用意、とは?」
「何度も言ってるだろ、日差し対策だよ」
そう言って用意した冷房服を取り出した、日差しを100%カットもしてくれる上にこの気温でも安定して稼働する冷房が内臓された服だ。
ずいぶん前から注文してたのがやっと調整が終わって手元に来た。
「おー! やっとまともに街の方へ来たけどにぎわってるなぁ」
「うむ、この辺りは最もにぎわう市場だからな!」
「市場って何を扱ってるんだ? お前らが食うのは砂だし……、そこら中にあるだろ?」
「何を言っておるか、いじゃるも食うものには拘るじゃろう? 食べたい砂と食べたくない砂があるのじゃ」
「なるほどなぁ」
「他にはそうじゃな、流行りの鱗の模様とか、作り方とか、どこそこの砂が良いとか悪いとか、そういう話が売られているのがこの市場じゃ」
「鱗の模様?」
そういえば砂の脚は鱗で覆われていたなと思い出し、改めてまじまじと脚を見る。
「それも流行りの模様なのか?」
「うん? わらわのはわらわのオリジナルじゃが?」
「へぇ、あっちにもこっちにも似たような模様の奴がいるからそうなのかと思ったよ」
「流行りに流されるなどは児子のすることよ。皆わらわの真似をするのじゃ」
「ファッションリーダーってやつだな」
なるほどな、鱗も砂で構成されている以上、自分らで模様を入れることができるのか……。
んで、それで着飾って流行りが生まれると、なるほどね。
バグサの自分がすごいのだぞという話を聞きながらそんなことを考えていた。
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