第807話:ルガー=クイズ~無名の有名人~

「あ、メタラさんだ」

「メタラさん?」

 街を歩いていたとき、友人が通りの向こうから歩いてくる人を見てそう言った。

「知り合いか?」

「ううん、知り合いじゃないけど、有名なヒトだよ」

「へぇ、知らなかったな、何の人?」

 何で有名なヒトなんだろ、興味あることだったら後で調べてみよう。

「......?」

「どうしたの?」

「いや、私よく考えたらあの人が何で有名なのか知らないや」

「えぇ……」

 そんなことってある?

「いやだってさ、私もあの人が有名なヒトだって聞いたことがあるだけだからさ」

「誰に?」

「風の噂で……」

「風の噂」

 信憑性ゼロかな?

「別に有名なヒトじゃないんじゃない?」

 と思っていたのだが。

「あ、メタラさん」

「おー、メタラさんだ」

 と、メタラさんとやらを知っている声が聞こえてきて本当に有名なのではないか思ってきた。

「本当に有名っぽいね」

「言ったでしょ?」

 何で有名なのかも思い出せないくせにどや顔しないでほしい。

「結局、何で有名なんだろうか」

「聞いてくるよ!」

「え、おい」

 止める間もなく、その辺の人に聞きに行ってしまった。


 少しの間いろんな人に声をかけて回って走り回って戻って来たけど、特に成果のありそうな顔はしていなかった。

「なんかわかったか?」

「ぜーんぜん、みんな有名なのは知ってるけど何で有名なのかは知らないって」

「謎なヒトだな……」

 有名なことで有名なヒトなのかもしれないな?

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