第806話:ダナー=ジンガツ~生前やり残したこと~

「あっ、」

 昼飯を食べてたら、突然何かに気づいたというふうに匙を止めた。

「どうした? 彼女との予定でも思い出したか?」

「そんなもんはいねぇが思い出したことがある」

「なんだ、昼飯を止めてまで聞かなければいけない話か?」

「いや、食べながらまとめるから先食べてくれ、すまん」

「そうか」と中断された食事を再開する。


「やり残したことがあったんだよ」

「どこに、研究室か? まだ空いてるはずの時間だし教授に話してやりに行ってもいいと思うが。次の方は俺から言っといてやってもいい」

「ちげーよ、死ぬ前にやり残したことがあったのを思い出したんだよ」

 ああ、死ぬ前の話か。

 そんな話に昼飯を止めてまで話を聞かなくてよかった。

「で、何をやり残したって?」

 まぁ、この流れなら今からそれをやるって流れだろう。

 適当に出来そうなことなら協力して、出来なさそうなら適当に可能性だけ提示して後から話を聞いたりしよう。


「近所の大食いメニューを制覇したかったんだよ」

「……ん?」

「んってなんだよ、なんかおかしなこと言ったか?」

「いやそれ今からじゃどうにもならんだろ」

「やり残したことなんだからそういうもんだろ」

 話が噛み合わない。

「やり残したことがあるから、一緒にやってほしいとか、そういう話じゃないのか?」

「? いや、俺は単にやり残したことがあったことを思い出しただけだけど」

 なるほど、思い出しただけで今からやるぞ!って訳じゃなかったのか。

 ……それはそれでムカつくな。

「よし、大食いメニューの内容覚えてるよな? もしくは全世の図書館に行って確認しに行こう」

「え、突然なんだよ」

「今からそのやり残しをどうにかしに行くんだよ、思い出せるなら俺が作る、わからなくても調べりゃ出てくる、さっさと済ませるぞ」

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