第804話:タタラ・ラタクツ~内部存在~
「魂って何だろうな?」
「どうした、頭でも打ったか? それとも死んで馬鹿が治ったか?」
馬鹿がまた馬鹿なことを言い出したと思った。
「いや違くてな、いや違わないのか? なんていうかよ、この体って前の世界から続いていると思うか?」
「同じ、じゃあないな。実際のところ若返ったりしたし、体の連続性を問われたら違う体じゃないかというのは否定できない」
馬鹿が珍しく、答えづらい問いかけをしてきて
「じゃあ、俺は俺なのか?」
「......そりゃあ、お前はお前だよ」
自信がない、連続性の保証を何でしているのかわからない。
「じゃあ体が変わっても同じだっていうのはどうやって決めてんだってなってな、やっぱり魂かなってな?」
「魂が同一だから同一な存在か……」
実際のところ魂が同一かどうかも定かではないんだが、まぁ言うと余計こんがらがりそうな気がするから言わねぇ。
「いや逆か。同一性を保証するものとしての魂か、そういう考え方もあるな」
なんとなくそれらしいことを言って、話を終わらせよう。馬鹿は馬鹿だからどういう方向に話が飛ぶかわからん。
「じゃあ魂ってのはなんだ?」
ほら飛んだ。
「同一性を保証する物だろ?」
「魂が同じだってことを保証することは分かったけど、どうやって魂が同じだってわかるんだろうな? 魂ってみたことあるか?」
「……ん、ちょっとまて」
魂ってなんだろうか、連続性を保証するものとしては記憶とか、そういう物だと思うんだが、たぶんこいつはそれなら「記憶喪失になったら別人か?」とか言いかねない。
「あー、なんとなく見ててわかる癖とかあるだろ、そういうのが魂だ、たぶん」
こいつはたぶんこういう話の方が納得するだろ、どういう理屈で世界を見ているかはわからんが、自分から見てサンプル数が多いこういう考え方の方がわかりやすそうだ。
「あー、お前がなんか膝に手を重ねて置く癖とかか。確かに、それをしてたらお前だと思うもんな」
気付いたら膝の上に手を置いていた、意識してなかったがこれが俺の魂か......
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