第802話:アコラ・スイグ~魔王の城~

「あー、かったるいな」

「何を言う、力を持つものの責務だ。しっかりこなせ」

「へいへい、やりますよっと」

 遠くに見えるは魔王の城、今世界で不相応にも力を誇示してしまった元魔王の力の象徴というものだ。

「それにしても、俺らに声がかかるなんて久しぶりだよな」

「最近は魔王だったものも最初のオリエンテーションで心折られおとなしかったからな」

 よせばいいのに、と内心呟きながも武器を取る。

「まぁ飯のタネ、今日はいいもん食おうぜ」

「普段から食えるだろうに……、油断はするなよ。迂闊でも愚かでも魔王は魔王、収集掛けられて慌てて準備した俺たちとは違って、誰にも気取られずに城まで用意したような奴だ」

「わかってるよ、城毎ぶっ飛ばすんだろ。わかってるわかってる」

 手に取った武器の尻にあるスイッチを入れると主砲が不調なさげに姿を現し、砲身は魔王の城に向いていた。


「はい発射」

 トリガーの安全装置を外し、引く。

 空気を焼く音が響きながら、過剰では無いかと言われそうな程の豪快なエネルギーを魔王の城へ向けて放つそれは、少しの放出のあと沈黙した。

「ほれみたことか」

 城はずいぶん丈夫な素材で作られていたのか、この距離から目視できる破損は見当たらなかった。

「いやぁ、まずはこっからでしょ城落としってさ」

 武器を握りなおして一つ踏み出す。

「派手に砲撃ぶちかまして、それで吹き飛べばそれでよし」

 二つ踏み込んでそこは距離を超えて城の前。

「慌てて出てこりゃそこを討つ」

 先ほどの砲撃で砕けていた城門を潜り、城へ入る。

「出てこないなら乗り込んで総ざらい、それが俺たちのやり方だろ?」

「そうだな、上から順番にさらっていくぞ」

「どっちが討つか勝負な、晩のおかずを賭けようぜ」

「いいだろう、品目はからあげだ」

 武器を鳴らして二手に分かれた。

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