第744話:オイロー・シント~雨の止んだ日~

 僕の住む、雨の止まない街の雨を止ませる実験が実行されるらしい。

 空を覆う結界を張って、一部に水を集めることで発電して、その電力で結界を維持するというシステムらしい。

 試作の類の一時的な措置らしいが、雨の降り続けた街の雨を止めてしまったらどうなるのだろう、という実験だそうだ。

 もともと雨の影響を活用していた施設には今まで通りの雨量を提供していくらしいし、湿度が重要な種族がいない、雨が好きなヒトだけが住んでいる街なので、大した影響は出ないと予想されている。

 僕も大して気にしてはいないが、普段見られな街の姿が少し楽しみなんだよな。


 雨止め実験の当日、街に何人かの技術者が出入りしているという噂を聞いた。

 結界維持用の装置でも入れるためだろうか。

 まぁ、関係ないが傘を持たずに歩いているのが珍しい。

 何らかの防雨はしているらしく、濡れてはいないようだが傘が名産のこの街ではなかなか見ない。

 まだ雨は降っている。

 傘を叩く雨音が、普段はわざわざ意識しなければわからないほどに慣れたそれが、ひどく大きく聞こえた。


 雨が止んで、久々の青天を見た。

 何かが引っかかるような気もしたが、青空を見ていたららどうでもよくなってしまった。2

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