第713話:皇隼人~成長~

「そういえば勇人君大きくなったよね」

「そう?」

 よく来る喫茶店、マスターから突然そんな話を振られた。

「最初に来たときはさ、こんなだったじゃない?」

 自分の腰辺りに右手を置いてあの頃の背丈を表す。

「そこまで小さくはなかったような……」と言ってからそういえば2年前はまだ体が5歳ぐらいだったことを思い出す。

 なんかこの世界に来るときに5歳の体になったんだよな、そう考えると成長期……

 自分では気づかないが確かにでかくなっているのかもしれない。

「今はこれぐらい」

 左手を右手よりも20cmぐらい高いところに置く。

「そんなに大きくなった?」

 この世界に来る前はもう高校生で、成長も大体止まってたし、久しぶりに会う親類なんてのもいなかったから、大きくなったねなんて言われたのはずいぶん久しぶりのことになる。

「いやぁ、なんか、ちょっと恥ずかしくなっちゃうな」

「そういえば勇人君がこのお店に初めて来てから2年かぁ」

「覚えてるの?」

「うちはお客さんが少ないからねぇ、メニューが読めなくてペルツエを注文したこともしっかり覚えてるわよ」

「あー、あったなぁそんなこと。いったいあれ何だったんです?」

「トラスティータって世界のマイナー民族の伝統的な飲み物でね、たまーに飲みに来る人がいるの。飲みすぎると声が出なくなるからあんまり飲まないほうがいいわね」

「そんなもの置いてるんですか」

「一応、どんな世界のどんな飲み物でもそろうってのが売りだから。たぶん飲めないだろうなぁって思って出したけど、まさか全部飲んじゃうとはねぇ。二度と来ないだろうなぁって思ってたけどまた来たし。確か夏前のことだったよね?」

「まぁ、この世界に来たばかりで一度入ったお店だったから安心してってこともあって……」

 目の前でカップをぶつけられた人がいたりしたけど……まぁ実際にそういう感じだったし……

「そういえば、まだ魔物ハンターみたいなことやってるの?」

「一応だけど、最近はハーメンの卵集め以外にも手を出してて……」

「へぇ、頑張ってるんじゃない」

「あんまり行ってないけどね、最近は旅行とか行ってる方が多い感じ」

「みんな旅行行きますよねぇ、私はだいたいいつもお店を開けているので旅行はあんまり行けないんですよ」

「あー、まぁ、またどこか行ったらお土産とか、買ってきますよ」

「えぇ、期待してますね」

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