第714話:フィシカ・スピーニ~昔々~

「これは昔の話だ、どれくらい昔かといえばまだ物質概念が生まれて間もない程の昔だ。いや、そこまで昔のことではなかったかもしれない」

「実際どれぐらいの昔なのさ? 誇張無しで」

「昨日……だったかなぁ?」

「昨日!? 昨日の話をそんなに昔のことみたいに語ろうとしていたのかい!?」

「いや、さすがに昨日のことじゃなかったと思う、もっと前、もっと前だ」

「前って一週間前ぐらい?」

「確か……あれから何度か冬が来たような気もする」

「何年前のことだよ、それを昨日って言ったか今」

「記憶が曖昧でなぁ」

「要所要所が曖昧でもいいからせめて昨日のことなのか世界の始まりレベルの昔のkことなのかははっきりしてくれ」

「昨日が世界の始まりということもあるだろう?」

「無いとはいい切れないけど、この場合はないよ」

「もしかしたらこの世界でのことではなかったかもしれない」

「生前の話?」

「いや、もう死んでいたような……? 前後関係が曖昧だから、死んでからのことなのか、最近のことなのか、大昔のことなのか、最近のことなのか、わからなくなってしまってな」

「最近って二回言ってるぞ、ボケたんじゃねーのか?」

「ボケてはおらんが……、もしかしたらまだ起きていないことなのかもしれん」

「流石にそれは無いだろ」

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