第700話:シェニー・ファニモ~星の光を集めて~
「あったあった」
草むらに隠れて落ちている、光る小さな球を拾い上げる。
これは星の光。
どこかのセカイで星が死んで転生してきたときに生まれるという、ただの光の球で用途は特に無く、育てれば大きな星に育つということも無い。
ただ光るだけの丸い石。
集めている人は少ないけど、お店に売ってるのを買うとなぜか高いということもあって、私はよくいろんなところを歩いて星の光を集めに行くのだ。
「お、またあった」
珍しい、一日に二つも見つかるなんて。
「あ、」
「え、」
拾おうとしたら、同じようにそれを拾おうとして屈んだ女の子と目が合う。
「あなたも星の光を集めてるんだ」
声を掛けられる、
「ふぅん、結構集めてるじゃない」
私の腰に付けた瓶を見て言う、瓶には10個程の星の光が入っていたはずだ。
「じゃあこれは私が戴くわ、いいわね?」
「あ、うん」
そう言って、彼女は拾った星の光を背負い鞄から下げたティーポットに放り込んで立ち去ろうとした。
「あ、待って!」
「なに?」
その彼女に声をかけて足を止めさせる。
「あの、あなたはなんで星の光を集めてるの?」
「なんでって……、もしかしてあなた何も知らずにそれを集めてるの?」
うん、とうなずく。
「ふぅん、じゃあ見せてあげる」
さっきのポットから一つ星の光を取り出して、軽くつまむ。
指ではじいて上空へ跳ばして、弾ける光を眺めながら呟くように言う。
「星の光が綺麗だからよ」
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