第687話:モシフリ-ガスリア〜過大評価〜
「流石だなモシフリは」
「まぁ、まぁな、でもそんな言うほどでもないぜ」
ああ、またやったこと以上に称賛される。
最近は謙遜するのにも慣れたもんだ。
謙遜っていうか、本当に過大評価が過ぎるので、そう言わざるを得ない。
本当に大したことはしていないんだ。
今回は道に落ちていたゴミを近くの掃除ロボットが回収しやすいように移動させただけだ。
そんなことは俺でなくてもやってるし、善良であると認められこそすれ、称賛されるようなことじゃない。
俺の被称賛体質はそんな程度のことじゃない、善行をして誉められるなら程度の差はあれ、理解の内だ。
ヤバいなと、そう思ってしまうのはなにもしてないのに意味もわからず誉められるときもだが、特に悪意を持って行動したのに好意的に取られて誉められたときだ。
今ではやらなくなったが、生前の世界で俺は悪人だったと自負している。
その時から被称賛体質で、何をしても認められるということもあって、人から認められないためにだいたいなんでもやった。
公共の物を壊せば老朽化の指摘と取られ、誰かの大切なものを壊せばしがらみからの解放と取られ、盗みも価値観の再定義とかよくわからん理由で誉められた。
そんな環境で生きていたんだから、そりゃあ何をしたら認められなくなるのか、考えて動く。
最終的、いやその一歩手前に到達したのが殺人、何人殺してもそれは偶然死ぬべきだったクズになり、本当の最後にたどり着いたのが自殺というわけだ。
「誉められるべき俺を殺した俺は誉められるのか」とそんなことを考えていた。
まぁ、誉められ過ぎて発狂したわけだな。
自己評価と周りの評価が違いすぎた故にだ。
だから、この世界でまた生まれたときはあの地獄が続くのかと、そう思ったのだが、誉められて然るべきことをしているうちは他者との評価と自己評価の差があまり大きくならないことに気づき概ね善性を示して過ごすことになったんだ。
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