第688話:オルカン・イルマⅡ~妖精の助け~

 絶望的に手が足りない。

 趣味でプラモデルを作っているのだが、積みプラモが多すぎてまったく手が足りてない。

 しばらく連日徹夜で作っていたが、ダメだ流石にダメだ。

 頭痛もしてきたことだし、今夜は寝るか。


『…………』

『…………』


 うん? 変な夢を見た気がする。

 全然夢の内容も思い出せないが、変な夢だった気がする。

 十分に寝たし、少し飯を食べて昨日の続きでもするか……

 あれ、昨日ってこんなに進めてたっけ?

 でも他に誰もやらんし、実際に今こうなってるってことはやってたんだろうなぁ。

 記憶をなくすほど徹夜してたのか……、気をつけよ。



「さて、そろそろ寝るかな」

 昨日の反省を活かして早めに寝ることにする。

 まだまだ消化しきれていない積みプラモが山ほどある。


『…………』

『パチン……パチン……』


 また変な夢を見た、ニッパーの音が聞こえたような気もする。

 一日中プラモ作ってるからか、夢でまでニッパーの音が聞こえてくるなんてな。

 んん?

 また、なんでか思ってるより進んでいる。

 昨日は少しおかしいな? 的な感じだったが、今日は確信がある。

 明らかに進んでいる。

 これは何かがおかしい。


 何かがおかしくても積みプラモは減らないので(減ってはいる)日中パチンパチンとニッパーを握り、プラモを消化していく。

 夜になって、カメラを仕掛けて寝ることにした。

 誰かが忍び込んで手伝ってるのならこれでわかるだろう。


『……フフフ……フフフ』

『パチン……パチン……』


 また変な夢を見た。

 案の定昨夜寝た時よりも進んでいるし、カメラの映像を確認する。

「嘘だろ……」

 カメラに写っていたのは寝床から出てニッパーを握る俺、薄ら笑いを浮かべながらプラモを作る俺、綺麗に塗装もしていくつかのプラモを完成させる俺が映っていた。

 寝ぼけているにしては迷いない手つきだ。

 ふーむ、ちょっと心当たりがないわけでもない。

 さて、プラモ作って寝るか。


『……フフフ……フフフ』

「おい」

『!?』

「ニッパー落とすなよ、てめぇだな。夜中に勝手に俺のプラモ作ってやがったのは」

『……!』

「ああ、だよな。てめぇ俺の頭に住んでるっていう妖精だよな」

『……』

「頭痛のこととか言いたいことはあるが、勝手にプラモ作るのやめろ、こえーんだよ。寝てる間に作るなら言ってからやれ」

『……!』

「積みプラモを消化するのを手伝いたかったんだろ? 俺一人じゃ消化できないからな、別に怒っちゃいないさ、結構センスあるしな」

『……!』


 まぁ、起きたら一個作りかけで止まっていたプラモがあった。

 話しかけたからまぁ仕方ないか。

 それは今夜のあいつのために取っておいてやることにして、別の箱を開けた。

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