第677話:皇勇人~間違った使いかた~
この世界に来てからずいぶん経った、いつもそう言っている気がするが、いつまでも新鮮なことが起きるのがこの世界だ。
退屈しないからいつも「ずいぶん経つな……」とつぶやく気分だ。
異世界だってことは慣れたし、常識の差はだいぶ吸収できるようになってきたが、まだまだ驚くことはいっぱいある。
例えば最近だと、見慣れたあれが異世界であんな使われ方をしているとは思わなかったりとかさ。
あれ……、なんでこんなところにあるんだ?
見かけたもの自体はよく見るアレ、所謂フライパンだ。
しかし置いてある場所が、厨房でも調理器具店でもなく、フライパンがあんまり似合わない場所。
そこはトイレだった。
トイレの壁にフライパンが掛けられていたんだ。
トイレにフライパンが置いてある理由なんてあまり多くは浮かばないし、あんまり想像したくもない。
しかして、なんでトイレにフライパンが置いてあるのか、考えたくないのと考えてしまうのはまた別の問題であり、考えてしまうのは仕方のないことだ。
やはりあれを掬うためだろうか……、そうだよな、形状から言ってそれしか考えられないもんな。
でもなんでフライパンなんだろうか、もうちょっといいものがあるだろうに、ハンドスコップとか。
「なんでフライパンなんてトイレに掛けてあるんですか」
やっぱりどうしても気になったので聞いてみた。
「フライパン? いやぁねぇ、トイレにフライパンなんて置くわけないでしょうに」
「え、じゃあトイレにあるあれは?」
「あれはね、清潔の目印よ。あれを掛けておくとトイレが綺麗に保たれるの」
「……なるほど」
確かに調理器具が置いてあるところを汚くはしたくないが、確かにしたくはないが……
うーん?
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