第676話:コルスオ-ハリエ~エリアバグ~

 仮想空間都市、というものがある。

 物理世界には存在せず、仮想空間上にのみ展開している国である。

 物理世界で存在を知っている人は稀で、ここには主に情報生命体と呼ばれる者が物理世界の真似事をするために集っている。

 三次元空間を再現した疑似物理演算空間が存在し、そこに人々は思い思いの己が想定する物理世界生物の姿を取り集うのだ。

 ん、僕は物理世界からここにアクセスしている。

 だから物理世界の常識でここを見ることができる。

 いや、わざわざそんなことを言ったのにも理由がある。

 ここは物理世界を再現したとは言うが、物理世界に現れたことも無い情報生命体達が物理世界から情報化されて閲覧できる少ない情報で構築されているから、いったいどういう意図でそうなっているのかも怪しい空間が多数ある。

 いや、ただ再現しただけで意図も何もないのかもしれないが。

 僕はそういう物理世界と仮想空間都市の差異を見るのが好きなんだ、見てると頭がおかしくなりそうな感じが特にね。


 カフェのような外見の建物の、テラス?には接触判定のない見た目だけ椅子が置いてあったり(まったく客が入らないカフェが映る定点カメラからの情報で見た目だけ再現したのだろう)

 ランダムな時間(そもそも時間の概念が曖昧な空間だ)になる夕方の放送だったり(しかも内容は様々な言語が混ざって意味不明な音データを出力している)

 他のエリアとデータ形式が異なるのか、色が反転していたり物質特性が適当に設定されていたりしてコンクリート床がスポンジの如くふわふわだったりする。

 僕はこういう空間を修正し報酬としてここに集う情報生命体からデータを回収して物理世界に持ち帰るという、そういう仕事をしているんだ。

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