　悪魔というのは世界によって仔細は異なるが、魂と引き換えに願いを叶えてくれる存在のことを言う。

　この魂と引き換えというのがこの世界では問題になっているらしい。

　魂を奪われた者は死後どうなるかという話だ。

　世界の死後観によって異なるのだが、生まれ変わりのある世界では生まれ変わることができなくなったり悪魔の元で永遠に働かされ続けたりと、そういうことになっているという話が多いのだ。

　しかしだ、この世界には本来魂を悪魔に譲り渡して転生するはずがない人も転生してきている。

　それでは元の世界での悪魔は魂を手に入れられていないのかと言えばそういう訳でもない。

　この世界に転生したとしても元の世界で転生しなくなるわけではなく、二人になる。

　つまり元の世界で転生したそいつと、この世界に転生したそいつが同時に存在することになるのだ。

　だから悪魔としては魂を手に入れることに成功していて何も問題が無いようにも思える。

　しかしだ、これは一部の悪魔の話になるのだが、悪魔は魂が欲しいわけではないのだ。

　次に続かないという事実を欲している者はかつて魂を奪ったはずの相手とこの世界で再会して酷い思いをしたし、欲におぼれ未来を捨てたものがこの世界でまた別の人生を歩んでいたりと、悪魔甲斐が無いという話だ。

　まぁ、悪魔も人間も生前はこんな世界があるなんてことを全く知らないわけだから未来を捨てる覚悟で願いを叶えているのは間違いないわけだし、この世界でかつて魂を奪われた人間が悪魔と再会した場合、だいたいその場で殺害されているから深く気にすることは無いのかもしれない。

　よし、考えはまとまった。

「僕もそれに倣うとしよう」

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