第664話:ハルオ-カイル~死の匂いを感じる~

 僕には他人の死がわかる能力がある。

 もうすぐ死ぬ人というのは独特の匂いを放っていて、近くにいるだけですぐにわかるんだ。

 便利な能力かどうかは……微妙なところだな、死ぬのが分かると言っても病気なのが分かるとかじゃなくて、すでに確定された未来での死が分かるってことで、えぇと、

「突然通り魔に殺される」という類の死が訪れるとかでもわかる。

 ただ、死ぬことが分かるっていうだけだから、どういう死に方をするかまではわからなくて……

 え? 死ぬってことを本人に伝えたりはしないのかって?

 うん、伝えない。

 そのことで死を回避できるかもしれないのに、か。

 そうだね、僕も僕だけが感じているこの匂いが死の匂いだって気付いた少し後は同じことを思ったよ。

「この能力は人を救うためにあるんじゃないか」ってね。

 だけどさ、僕が「あなたはすぐに死ぬかもしれないから気を付けて」って本人に伝えるとさ、どうなったと思う?

 その人たちは僕が伝えたことで死んでしまったんだ。

 もし伝えなければ生きていたかもしれない死に方。

 5度程同じ経験をしてわかったね、僕が死の匂いを感じた人は絶対に死ぬってさ。

 それからできるだけ人と関わらないように生きて、誰とも会わなくなったのに匂い

 を感じて気付いたらこの世界に来たってわけ。

 なんでこんな話を君にしたかわかるかい?

 世界が変わったんだ、もしかしたらと思ってね。

 じゃあ僕はもう行くよ、また会えるといいね。

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