第660話:ラノーラ・ニオン~この中に一人!~

 今この狭い空間には5人存在している。

 その全員がなんだか落ち着かない様子でいて、私も例外ではなかった。

 この場の一人を除いてとある秘密を抱えていると伝えられているからだ。


 そう、この場にいる一人を除いた全員が異世界デビュー女装男子なんだ。


 私は生前、生まれの顔はそれなりに整っていたけども男性として生活していて、女装したいなと思った時にはすでに肉体的にも感性的にも手遅れというところまで来ていた。

 と、そういう後悔を抱きながら死んだところ、若い時の姿で生まれなおした。

 これ幸いと今回の生では子供の頃から女装して感性も肉体的にも調整して完璧な女装を身に着けたのだけど……


 話は端折るが招待状が届いて集まってみたら他にとても可愛い女性が4人いて、この中で一人だけが本当に女性であると告げられたわけだ。

 そりゃあみんな落ち着きもなくなる。

 女装男子の集いだったらお互いに「どうしてるのか」という情報交換の場になっていただろうが、その中に女性が一人混じっているとなると話は変わってくる。

 今この場は「誰だ……誰が女性なんだ……」という緊張感に包まれている。


『さて、膠着しているようなので、一つゲームでもしましょうか』

 天井から声がする。

 こいつが招待状を出してここに私たちを集めて、一人だけ女性であるとぶち明けた野郎だ。

『最初のゲームは、雑談系のゲームにしよう。そうだな……』

 そうやって提案されたゲームをいくつか進めていくうちに、なんだか全員気がいいやつだし性別とかどうでもいいなとなって結局誰が女性なのかとかそういう話もせずに連絡先を交換して解放された。

 このゲームを提案したやつの目的はよくわからなかったが、なんか、少しかわいそうだなという気になった。

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