第644話:カンセンス・ホマ~アートタウン~

 カラフルな街だ。

 壁がペンキで自由に塗りたくられていて、街自体がひとつの作品のように作られている。

 さぞかし、芸術家が多く暮らす街なのだろう。


「はぁ? 芸術家? この街にそんなもんいねぇよ!」

「芸術家……、いねぇな。芸術家とやらに用があるんなら、この街で探すものじゃあない」

「芸術家ね、昔はいたんだが……、今はなぁ」

 街で話を聞いたところ、どうやら今この街に芸術家はいないらしい。

 はて、まだこの街は日々模様が変わってるという話を聞いてきたのだけど、誰もいないというのであれば誰がやっているのだろう。


「壁の模様か、誰が作ってるんだろうな……、俺は知らん」

「俺は描いた奴を見たことかない」

「あれの作者は見たことないが、殺したいと思っている」


 とまぁ、こんな感じだ。

 どうなってるんだろうか、街の外で話を聞いたときは街の人が皆で作り上げていて、あの街の誇りであるみたいな、そんな話をされたはずなんだが。


 というか、この規模のものが誰も制作者を知らずに過ごしているというのはどういうことなんだろう。

 というか、恨まれているというのもわからない。


 誰か事情に詳しい人はいないものか、と聞いてみたら、

「俺からは話したくないが、あいつなら」と紹介された人がいる。

「話を聞けばなんで俺達が知らないのかもわかるだろう」とも。

 ということは、彼らは全部知っていたのだろう。

 知った上で知らない振りをしていたんだ、どういうことなんだろうか。


「街の絵を描いているのは彼らなんですよ」

 話を聞きに行ってまず言われたことはこれだ、とういうことだ?

「この街は昔から芸術家が集まる街でしてね、多数の作品がこの街から送り出されていった訳なんですけども、まぁ不思議なことに数世代後には質が落ちはじめまして、そこで私がデザインした街を彼らに作ってもらっているというわけです、芸術家が住んでいるに相応しい街をね」

 つまり、あの街は彼らの作品じゃないと。

「いえ? 彼らの作品でしょう、彼らの手で作られているんですから。なにか、おかしいですか?」

 なるほど、彼らがああ語るわけだと納得した。

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