第637話:バッカス・マド~一つしかない太陽~
「太陽が一つしかないのはなぜだと思う?」
研究室の学生の一人、元から一人しかいないその一人に問いかける。
「太陽ってのは一つしかないものだからでは?」
「いや、世界によってはいくつもある世界もあるし、そも太陽が世界を構成する1要素であり、複数どころか無数に存在する世界もある」
かつて、いろいろな世界を渡り歩いて見てきたからね、良く知ってるんだ。
「それでもこの世界では一つしかないですよ?」
「不思議よなぁ」
「ですかね」
太陽が一つしかない世界しか知らない学生くんはピンとこない顔をしている。
「そもそも世界が滅びたら土地も丸ごとこの世界に現れるのによ、人が住む大地だけで太陽は増えやしない」
「概念的に近似しているので同位置に重なって出現しているのでは?」
僕の話をよく覚えている、概念的近似物の同座標重複転生の話なんてめったにしないのに。
「それにしては太陽の質量が増加していない……、概念的近似物が同位置に重なって出現すると確か質量も増えるんだ。観測例が少ないから違うとも言い切れないんだけどね」
「そうなんですか……」
「他の場所に出現しているのかもしれないな……、観測されていない場所なんてこの世界にはいくらでもあるんだ、例えば……地の裏側とか」
「そういえばなんで地の裏って未知なんでしたっけ、いくらでも高性能な採掘機械はあるでしょう」
「僕もよく知らないんだが、地の裏には死が満ちているという話を聞いたことがある。ほら、時たま穴から漏れてくるっていうニュースがあるあれだよ、一定の深度を超えると漏れ出してくるらしい」
「なんか死が満ちているって暗そうですよ、本当に太陽が地の裏にあるんですか?」
「一説ではそう言われているね。まぁ、地表にも未踏の地はいくらでもあるんだ、そのどこかに太陽が埋まっているようなこともあるんだろう」
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