第618話:ファルア=キャペⅡ~歓竜祭~

「ファルア、これ頼む」

「はい!今手一杯なので積んどいてください!」

 今年も歓竜祭の時期がやってきた、竜からの高品質な恩恵が大量に供されるため鑑定と整理の仕事が死ぬほど忙しくなる時期だ。

 街はとても潤うので祭を行うが、利益よりも仕事の忙しさが強くなるこの時期を僕らは竜獄季とも呼ぶ。


 大きなコンテナ一杯に詰められた、若い竜の比較的薄く、しかししなやかで強度の高い、濁りのない竜の力に満ちた鱗を鑑定した上で良品のタグをつけて鑑定済みのコンテナへ運ぶ。

 基本的に良品が9割9分のこの時期なので全部良品ということにしてやりたくもあるのだけど、悪品も無いわけじゃないので鑑定は慎重に行わないといけないというのがめんどくさい。

「竜ももう少し一年を通して平均的に恩恵をくれてもいいのになぁ」

「仕方ないでしょう、あっちもいろいろ超越してるとは言っても生物として振舞ってるんだから」

 一緒に作業している同僚が独り言にこたえてくる。

「まぁ、そういう振舞いをしない竜はそもそも恩恵も与えてくれないもんね」

 結局のところ、竜の老廃物を集めて分類して売り払うというのが僕らの仕事だ。

 それは結局竜の生態に振り回される生活であるということに他ならないわけで、この時期が鱗の生え代わりの時期で死ぬほど忙しいからといって、他の暇な時期に贅の限りを尽くせる感謝を竜に捧げない理由にはならないのだ。


「このコンテナ空けたら休憩しようか」

「いいね、少しだけど祭りを回ろうぜ」

 死ぬほど忙しいとは言っても祭りの時期の街は他の時期より楽しいので少しの休憩は必要なんだ。

「どうせ、処理能力を上回って搬入されるんだ。少しぐらい遅らせたって搬入が滞るだけだし」と言い訳をしながら、紛れ込んでいた粗悪品を小さめの箱に放り込みながらたくさん並ぶ名物の屋台のどこを回ろうか考えていた。

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