第590話:アルゴラーク~ドミノ倒し~
やけに薄い建物が多い街だ。
薄くて高さが統一されていて、一定の距離を置いて並んでいる。
なんていうか、あれだこれは。
危うい印象を受ける。
一つ倒れたら、そのまま全部が連鎖して倒れていきそうな……。
とか考えていたら、そういう思想の元設計されている街らしい。
端っこの方にあった看板に書いてあった。
一年に一つのペースで建てて、最終的には全部倒すっていう感じらしいけども、普通に建物として使用してるように見える。
この看板に書いてある内容はもしかして、一般には知られていないんじゃないか。
「このビルを倒す?」
「ええ、そういう計画になってると聞いたんですけど」
ビルから出てきた人を捕まえて適当に聞いてみる。
「いやぁ、聞いたことないなぁ」
「そうですか……」
やっぱり知らない人はいるらしい、というよりも知らない人のほうが多いらしい。
適当に捕まえて声をかけまくってみたが、一人も知らなかったしこれは誰も知らないと考えた方が自然だ。
なんでこうやってずっと伝統として続いているっぽいのに目的を知っている人がいないんだろうか。
なんとなくなんとなくで考え歩きながらビルを数えていたのだけども端から端まで考えても答えは浮かばなかった。
ビルの数は4035棟だった。
なるほど、これだけの年月が経っていれば情報も掠れるし意義も伝わりづらいだろう。
この街に住んでいる人のほとんどは有機肉体系だしせいぜい数百年程度の寿命しかないだろうし、壊すために作るっていうのも微妙に共感しづらい人は意図的に内容を排除するだろう。
そういえば、何棟建てたら倒すとかいう記述は看板にはなかったな……。
倒すっていう考えが消えたのはその辺にも理由がありそうだ。
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