第554話:コロガー*バムロン~氷上の魔物~

 氷原、実際は氷が湧き出してできる大氷樹の切り株なんだけども、最近ここに魔物(ここでは超常の怪物のこと)が出るという噂がある。

 特に私はそういう存在を狩るのが趣味というわけではないのだが、興味があるというだけだ。

 氷上キャンプもしたかったしと、しばらくの間氷原でテントを張って待っている。

 しかし、いくつか夜を寝て明かしたが一向に、噂の魔物とやらは現れない。

 一応断ってはおくが、夜寝ていた隙に現れたんじゃないかという疑いに対してはNOだ。

 噂では目撃情報は昼間が多く、寝るときもきちんとカメラを回していたが何も映ってはいなかった。


 夜が来て、僕を含めた幾人かのキャンパーを除いて人が消えた氷原。

 昼間は氷上スポーツでにぎわっているここも風と氷の音以外にしなくなった。

 風を遮るものは何もなく、基本的に寒い。

 火を焚くことも(基本的には)できないため寒さに耐性のない人はいないとは思うが、うっかり死人とかでるんじゃないかというレベルの寒さだ。

 私が気にするようなことではないが。


 今夜のは青い夜。氷の大地が青く照らされていて幻想的だ。

 幻想的だが、こんな夜に魔物は似つかわしくない。

 少しだけ夜更かししたが、寝た。

 カメラに残っていた映像は後に売れた。


 昼間、気晴らしと氷上を特殊な靴を履いて高速で滑るスポーツに興じたが、普段のトゲ靴で歩く感覚とは全く違いうまく歩くことすらできなかった。

 体を痛め夜は早く寝た、夜の色は黄色。

 あとから見た映像は遠い記憶の海に似ていた。


 赤の夜、魔物と言ったら赤い夜だよなと期待していたが何もなく、気まぐれに見ていたニュースサイトで氷原を均す大型機械の記事を見る。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る