第555話:ハルテーナ〜深海魚〜

 深海は光の届かない、暗く冷たい世界だと言ったのは誰だっただろう。

 確かに、暗くて何も見えなくて寂しさはあるが、あまり寒いという感じはない。

 むしろ水温は暖かいぐらいだ。

 この世界の深海が特殊なんだろうか。

 僕はよく深海へ遊びに来る。

 この辺りには人里は無く、知的生物は存在しないがその分魚等の生物が多く存在している。

 多様性に富んだこの世界でも特に多様性に富んだ生物がいるのが深海だ。

 ただうろうろと彷徨いているだけでも楽しい。

 蠢く刺々、浮かぶ風船、回転する発光体、それをまとめて口に吸い込む巨大生物。

 なぜ他に深海探索を趣味にする人がいないのかが疑問なほど楽しい。

 にょろにょろした白いびろびろ状生物が水の流れに乗って巻き付いてくるが、柔いので問題なく引きちぎれる。

 多少かわいそうだが、白びろの運がなかっただけだ。

 だいたいこの深度の生物は運で生きているような気がしてならない。

 自分かららは動かず他の生物が流れてくるのを待っていたり、動くやつもぶつかった物を食べていたりと、原初の生物が深海に多いと言われたのも納得だ。

 これは自然に淘汰される気がする。

 しかし、ある程度の繁栄はしたらしいことを考えるとどれもそれなりに効率がいいのか、それとも構造的に運が良いのかどちらかなのだろう。

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