第551話:カルム・コルニアⅡ~リアル3Dモデリング~

「なぁお前さんよ」

「なんだよ、だいぶそれらしい形にしてやったろ」

 粘土をこねていると命の宿った粘土人形の、結局名前のつかなかった粘土が話しかけてきた。

「ああ、動きやすくしてくれたことと焼かずにおいてくれてることは感謝してるんだが、」

「じゃあなんだ、焼かれたいのか」

 もともと僕は粘土人形を焼いたりはしていない。

「違う違う、ちょっと気になってよぉ、どうしてお前さんは粘土なんてこねてるんだ?」

「ああ、そんなことか」

 その程度のことなら答えてやらないこともない。

「3Dモデリングをしているんだ」

「ほぉん、3Dモデリングねぇ?あれだろう?データ上の物体のあれだろ?」

 えらくざっくりした認識だがなんとなくでは理解はあるらしい。

「それにしてもだ、その3Dモデリングたらはなんだ、PCとかそういうのを使うんじゃないのかい?」

 そりゃあそうだ、同じ世界の生まれだし僕だってそういう知識は持っている。

「この世界にはいろんな道具があってさ、この粘土は実際に作った形状をそのままデータにすることができるんだよ」

「ほーん、なんで直接PCで作らねぇんだ? 粘土なんてこねてたら手が汚れるし重いし邪魔だしでいいことなくねーか?」

 さすがというかなんというか、一度幽霊として生きただけのことはあるのか嫌なところを突いてくる。

「僕にはPCの入力装置を使って形を作ることはどうしてもできなかったんだ、だから粘土を使ってモデリングしてるんだよ」

「へー、そうかい?」

 粘土は自分の体を見回して少しだけ疑問そうにそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る