第511話:カーナ=ファルム~青く染まる世界~

 あれ?

 目を覚ますと青い世界。

 いや、目を覚ますとというのもおかしい。

 ここにいることに気が付いたとき、私は寝てはいなかった。

 だから、気が付いたらこの場所にいたというのが正しい。

 記憶を手繰ってみても、昨夜寝て今朝起きたところまでは覚えているがそれ以降は曖昧だ。

 朝起きた記憶があるから夢ではないのか、それとも二度寝をしてしまっているのかはわからないが、6割ほどの確率で夢だとしても4割の確率で現実なので、現実を想定した行動をしよう。


 ここは青い世界。

 上も下も右も左もそのまた向こうも、境界などない青一色だ。

 境界なども見えず、かろうじて地面があることしかわからない空間だ。

 なんとなく、あそこに似ているかもしれない。

 私自身は行ったことはないのだけど、世界の果ての景色という奴。

 過去に行ったという奴のエッセイを読んで写真でも見たことがある。

 もしここが、その世界の果てだというのならば、来るときに使ったであろうゲートがあるはずなのだが、そのようなものは見当たらない。

 じゃあここはどこなのだろうか。


 歩いても歩いても歩いても景色に変わりはなく、青い世界が続いているだけ。

 もし世界の果てで、ゲートから遠い場所にいるのだとしてもこれだけ歩いて何も変わらないというのはどういうことだろうか。


 だんだんと疲れてきてそろそろ休憩でもしようか、それとも一旦寝てしまおうか。

 そんなことを考えていた時にブザーが鳴って私は目を覚ました。

「はいおはようございます、どうでした?」

「……なんにもわかりませんでした」

 思い出した、というよりも知っている状態に帰ってきたという感覚。


 あの青い空間は夢ではない。

 何もない青い空間に自分が突然放置されたら、そういう体験ができる設備にいていたのだ。

 そしてその体験は突然でなければならないので、一時的にそういう設備に来ているという記憶にアクセスできない状況にして、バーチャルであの空間に放置されていたというわけだ。

 なかなか貴重な体験だった、今度は他のコースも体験してみよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る