第502話:カムル・コルニア~粘土人形~
やばい、誰もいないはずの部屋でガタッと音がした。
あの部屋は普段作っている粘土人形を保管してある部屋だが、まさか粘土人形に命が宿った?
いやまさか、何でもありのこの世界だからって、むしろこの世界だからこそありえない。
泥棒……?
まさかとは思うが、意を決して部屋を覗いてみる。
そこで待ち構えていたのは
「おう、なんだお前」
まさかの粘土人形に命が宿ったパターンだった。
一応説明するが、僕が作っている粘土人形は大体人型をしているが、リアル志向ではなく抽象度が高いもので、色も粘土の茶色そのままだ。
「なんだって、お前の方がなんだよ」
つまり、粘土人形に命が宿ったところでそれは動いて喋る粘土の塊にしか見えないということだ。
「俺は……なんだ、なんだっけ?体も妙に重いし、全然わからん……? お前、俺が何か知らないか?」
「粘土人形だぞ」
「粘土人形……?そんな馬鹿な話が……? あるじゃねぇか……」
言われて自分の体を改めて認識したのか、自身が粘土人形だということに気づいたようだ。
どうやって物を見ているのだろう。
色々と話を聞いていると記憶はないが元は普通に生身の人間だったような気がしているらしく、知っている知識を総合して考えると一度死んで幽霊とかになって、物に憑りついたりしたりそういうのを経由してこの世界に転生してきたパターンだろうか。
「てーことは、生きていた頃の俺が別でこの世界にいるかもってことか?」
「生きていた頃の君が死んだあとこの世界に来たってことになるだろうね、変な話だけど。探したいって言うなら止めはしないけど」
「イヤー別にいいわ、この体も慣れればなんてことなさそうだし逆に便利っていうか?全く記憶ゼロだし、元の俺と出会ってもわかんねーだろっていうか?」
「そうかい、じゃあこれからどうする?別にうちにいてもいいんだけど」
「そうするつもりだったが?」
そうするつもりだったのかい。
「じゃあ、そうならまず名前を決めておこうか、何か希望は?」
「うーん、そうなー。カルムってのはどうだい」
「だめだ、それは僕の名前だ……、ってまさかお前……」
「なんだよ、偶然だろ?」
「ああ、偶然か、そうだな……」
そういうことにしておいた方が良さ気だな。
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