第470話:ゴマナス=イクル~雰囲気セレクト~

「これかな……、いや雰囲気的にはこっちか」

 今日のコーディネートを決めるとき、なんとなく、雰囲気で、理由は無いけど、といった言葉を多用しがちだ。

 そう、だいたい私は雰囲気で今日のコーデを決めている。

 いうなれば雰囲気コーデだ。

 意味の解らない服装になることもあるが、今日はその中でなんとなく成功したコーデを紹介しよう。

 そう、雰囲気セレクトだ。


「お、今日はおしゃれだね」

「そう?」

 大学の部室、友人との会話だ。

 この日のコーデは確かコラベニス世界の正装らしい濃い緑の長めのコートに濃いめの赤いセーター、下はどこの世界にでもある無難な黒のパンツ。

 コラベニス世界の正装で用いられるコートを羽織っていたということだけが重要なので他はいまいち思い出せない。

「なんとなく、今日はこういう服装がいいかなって思ったんだけど」

「季節感がないのが致命的なんだけどね」

 そうだった、確かこの日は夏季でコートを着る時期ではなかった。

「でも、今日それを着てきたのは正解かもね。ボクもさっき知ったんだけど今日はコラベニス世界の王族がどういう理由かわからないけどこの学校に来るみたいでさ。コラベニスの正装以外の人は特定の時間出歩いちゃダメなんだって」

 思い出しながらの語りだから細部が微妙なのは勘弁してほしい、結局私は正装のコートを羽織っていたのでどの時間でも自由に出歩いてオッケーだったから細かいことを覚えていないのだ。

 王族というのに興味があって出歩いていたが、結局一度も会うことはなかったし。


 成功エピソードというには微妙な話だったかもしれない。

 まぁ、私の普段のコーデもだいたいこんな調子なのだ。

 思い返しながらなんとなくで今日のコーデを確定し、勢いで買ってしまったあらゆる服がとりだせるクローゼットを閉じて家を出る。

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