第469話:オルキス=イバンガ~古戦場跡にて~

「ねぇ、本当にこんなところにお宝なんてあるの、立ち入り注意区域だよ?」

「立ち入り注意区域だからこそさ。本当は禁止区域に行きたいが、禁止区域に入るのはリスクの方がでかくなるからな」

 立ち入り注意区域、空間の不安定さだったり危険物の埋没だったりして自己責任の元でのみ立ち入ることができる区域だ。ここでの損失はどんな理由であれ補填されない。

 禁止区域となると、立ち入りに特殊装備や技能体質を必要とし、万全の用意をもってしても帰還困難になるとされている。

「そもそもなんでここ立ち入り注意区域なの?」

「知らずについてきたのか? ここはかつてこの世界がまだ戦争に明け暮れていた頃の主戦場の外れだったからさ」

 まだ文明人がこの世界に来るようになったばかりの頃、魔法文明と科学文明で大きな戦争が起きた。

 言葉も文化も大きく違う二つの異世界連合は価値観を認められず、お互い異質として排除しようとした、らしい。

 お互い、人員はどんどん追加されるし技術レベルも生前の世界で発達したものがそのまま持ち込まれ、疲弊することなくエスカレート、終戦の理由は不明だが、終戦までこの世界の至るところで世界が3つ4つ滅ぶほどの戦いが起きていたという。

「外れなの?」

「主戦場だった辺りは禁止区域に指定されているからな」

 なんでも空間異常があり、文字通り何が起きるかわからないこの世界の中で最も危険なエリアの1つになっているそうだ。

「さて、この辺がいいかな」

 周りは荒れ果てた土地と所々に生えるように立っている巨岩、鉄塊、謎の機械、等々。

「例えばあれだ」

 不自然な角度で地面から生えた尖った岩の1つを指し示す。

「岩じゃない?」

「そう、岩だ。しかしただの岩じゃない、かつての戦いで魔法使いが生やした岩の剣だ」

「価値があるものなの?」

「いや、魔法使いが生やした岩の剣と言っても実際のところただの岩だな」

「じゃあ何なのさ」

「魔法で生やした岩はただの岩で価値は無いが、術式には価値がある。まだ安定して記録を残せるようになる前に使われた術式だ、中には失伝してしまったものもある。他にも科学兵器や大型爆弾とかも見つかると結構高値で売れる。失伝していなくても文化遺産として価値があるらしい」

「じゃああの辺を探してみればいいんだね?」

「そういうことだが、気を付けろよ」

「え?」

 俺の忠告の前に岩の剣に向かって走り出してしまっていた、弟子と呼べる少年に目をやると案の定、『まだ生きている術式』を踏んでしまっていた。

「外れと言っても戦場跡だからな、地雷や不発弾が残ってて迂闊に走り回ると危険だ」

 今さら言ってももう遅いが、俺は現代の防御術式を起動し、自分の身を守る。

 直後、弟子の足元が炸裂し、元々あった岩の剣を砕く角度で別の岩の剣が生えてきた。

 なるほど、あれは岩の剣で敵を砕くのではなく、最初の炸裂で敵の装甲にダメージを与えて岩の剣で脆くなった装甲、内部機構をぶち壊す術式だったのか。

「あーびっくりした」

「無事だったか」

 最初の炸裂で吹き飛ばされて岩の剣の直撃は免れていたらしい。

「このように注意区域だからな、危険はそこらに埋まっている。体の丈夫さにかまけず、十分気を付けて行動するように」

「はーい」

 まぁ、地雷除去のためにつれてきたようなものだが、気を付けさせるに越したことはあるまい。

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