第460話:ネイチャ=ファロウ~リアリティの無い~
リアリティ、主にフィクションがどれだけ現実らしいか、そういう話に用いられることが多い概念だ。
つまり、現実には適応されない言葉のはずで、特にこの何でもありの世界では存在する意味のない言葉だ。
しかし、今目の前にいるそれには、どうしてもぶつけたい。
「なんだそのリアリティの無い顔は!」
「え!?」
耳目は二つ、鼻口一つ、パーツは俺達の種族の標準的な数だ。それはいい、種族は同じなのだからあたりまえだ。
配置も、顔の中央に鼻、その下に口、鼻の上に横に二つ並んだ目、頭部の左右についた耳。
実に標準的だ。
しかし、並んでいるパーツの形がおかしい。
ペタリと張り付いたような目、三角形の鼻、ピッとペンで引いたような口、かろうじて耳は標準的だが、それがまた異質に感じる。
「どうなっているんだその眼鼻口!おかしい、おかしいぞ!」
「そんなこと言われたって、僕は生まれたときからこうだよ」
「その顔で喋らないでくれ、脳が混乱する」
「そんなぁ!」
顔の横に吹き出しが見える気がした。
「もう帰ってもいいですか?」
「だめだ、納得いくまで帰さん」
しばらくの間、リアリティの無さすぎる顔のこいつを捕まえて眺め続けている。
どうなっているんだこの目は、瞼が見当たらない。半目にさせてみたら真ん中に線が入ってその上が肌の色になった。鼻も、穴がない。どうやって呼吸するんだこれは。
口は、まぁ開いているが形が、どの音を出しても同じ形に開く。
なんだ、リアリティの無さの割にどこかで見たことがあるような気もする。
なんだったか、なんだったか。
「あ、あーあーはいはい、なるほど、そういうこともあるのか、なるほどなぁ」
「やっと納得してもらえました?」
「おう、すっきりした。すまんかったな」
なるほどなぁ、元の世界の漫画の世界から転生してきたのならリアリティの無い顔でも仕方ない。
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